子育てに従事しながら、地域の魅力を発信するフリー情報誌『天満橋おさんぽの友』を創刊した西山さん。街をより良くするために、地域の魅力を見つけ、発信し続けています。地域に対する思いや考え、これからの目標について、西山さんにお話を伺いました。
「天満橋おさんぽの友」を立ち上げた経緯
「専業主婦として子育てをする中で、子どもは日々成長するのに、自分自身は成長していない。周りを見ると、みんな仕事を通じて成長していて、自分だけ取り残されているように感じていました」
そう語る西山さんは、2016年に地域のフリー情報誌「天満橋おさんぽの友」を創刊しました。

「子どもと一緒に街を歩いていると、緑の美しさや思わず立ち寄りたくなるようなお店を見つけました。こんなに素敵な場所をもっと多くの人に知ってほしい、という思いが湧いてきたんです」と西山さん。
「自分たちがいいなと思うものは、少なくとも周りに何人かは共感してくれる人がいるだろうと思っていました」と、当時の心境を振り返られます。
最初は1人で始めた活動ですが、「写真を撮るのが好きな友人に撮影をお願いしたり、デザインが得意なママ友に協力してもらったり、記事を書いてくれる方がいたり」と、徐々に協力者も増えて来ています。

現在、『天満橋おさんぽの友』は、年に3回発行され、地元の情報を届ける大切なツールとなっており、これまでに18冊を発行しています(※2024年12月末時点)
幼少期に感じた「よくしたい」という想い
「『天満橋おさんぽの友』の活動をしている中で、よく思い出す幼少期のエピソードがある」と話す西山さん。
「子どもの頃、公園のブランコが錆びていたので友達と一緒にペンキを塗ろうとしました。そのことを母に話したら、たくさんのペンキを買ってくれたんです」。

しかし、ペンキを持ち込んだ西山さんたちは近所の大人たちに叱られてしまいます。
「公共のものに勝手に手を加えてはいけないという事だったんだと思います。でも、私たちはただ綺麗にしたかっただけなんです。」と西山さん。
「もちろん、手順やルールを守る必要性は理解しています。でも、公共のものだからと言って、誰も手を加えずに放置するより、みんなで良くしようと思う気持ちがあってもいいのではないのかなと思ったりします」。
「自分たちで地域を少しでも良くしたい」そんな西山さんの想いが『天満橋おさんぽの友』に反映されています。
人との繋がりが街を面白くする

「街にいるだけで、いろんな人に出会えるんですよ」。
西山さんは『天満橋おさんぽの友』を通じて生まれたつながりについて、そう語ります。
活動を始めてから、挨拶を交わす人が格段に増えたそうです。
「80歳を超えた素敵なおばあちゃまとお話しするようになったり、街で出会う方々と自然に挨拶を交わせるようになりました。『天満橋おさんぽの友』をしていなかったら、きっと出会えなかった方々ばかりです」と西山さん。
さらに、活動を通じて、人と人をつなげる役割も担うようになりました。
「たとえば、『この写真を撮ってくれた方がいるんです』と話すと、『その方に写真をお願いできませんか?』と相談されることがありました。実際につなげるとお二人とも喜んでくださって、本当にうれしい瞬間です」。と笑顔で語ります。


また、制作メンバーの絆も深まっているといいます。「自分が知らないところで、制作メンバー同士が仲良くなっているのを見ると、とても温かい気持ちになります」。
『天満橋おさんぽの友』は、街の人々を結びつけるだけでなく、関わる人たちの関係性も豊かにしています。
地図アプリには載らない街の魅力
「街を知ると、普段の生活が少し色づいて見えるようになる」。西山さんはそう語りながら、地域の魅力を探す楽しさについて教えてくれました。
例えば「オルガンビル」という建物。
「かつてこの地には縫製工場があったそうで、そこでミシンの針とオルガンの針が作られていた関係で「オルガンビル」という名前が付けられた」と聞かれたそうです。

「それ以降、オルガンビルの前を通るたびにその背景を思い出し、楽しくなるんです」と。
西山さんが紹介するエピソードは、単なる街の情報を超えて、日常の風景に新しい楽しさを与えてくれます。
「住民の方と話していると、『この店は、以前は別のお店だったんだよ』という話が出てくることもあります。その背景を聞くと、さらに街が面白く感じられるんです」。
地域の人しか知らないエピソードを知ることで、何気ない街歩きが新しい発見の連続に変わる。「日常の中で感じる『へえ、そうだったんだ』という驚きや喜びが、人との会話や発見を通じてどんどん広がっていくんです」。と西山さん。

『天満橋おさんぽの友』は、地図アプリには載らない地域の魅力を発見し、共有することで、街の新たな楽しみ方を伝えています。
今後の目標について
最近では、「フィットネスのニュースレターを作りたいから力を貸してほしい」「カメラマンとしてこれから頑張りたいから、まずはボランティアで関わりたい」ということを言ってもらうことがありました。
「やりたいことや目標を持つ人たちが、それを『天満橋おさんぽの友』に重ねて一緒に考えてくださることが増えています。その重なりをさらに大切にし、もっと価値をつけていけたらと思っています」と西山さんは語ります。

「共感してくれる人同士が協力し合い、そこから新しいものが生まれるのが本当に嬉しいんです。重なる部分が増えるほど、地域全体がより良くなっていくと思うんです」。と。
西山さんは、こうした重なりを支える「ツール」や「プラットフォーム」を作ることが次の目標だと考えています。
また、地域の魅力を共感し、共有できる仲間を増やすことが必要だと感じています。「たくさんの人に「天満橋おさんぽの友」に関わってもらい、店舗さんの取材に行ってもらったりして欲しいです。」とも。
「『天満橋おさんぽの友』を通じて、地域をもっと楽しく温かい街にしたい。」西山さんはそんな想いを胸に、これからも活動を続けていきます。
■西山 舞(にしやま まい)さん プロフィール
富山県出身。田舎がイヤで、東京に進学。なんとなく建築を学ぶ。
卒業後、設計事務所やキッチンメーカー、デザイン会社などを転々と。結婚により退職し、大阪へ。
せっかく建築から離れたので、何か好きなことをやろう!と思い、幼児教室で理科実験やロボット教室の講師を始める。出産育児のため退職。
2015年、「子どもとの時間を大切にしながら仕事をしたい」と、勢いだけで「天満橋おさんぽの友」を立ち上げる。面白いと思った友人が細く長く繋がって、気が付けば18号まで発行(2024年12月時点)
インスタグラム:https://www.instagram.com/tenmabashi_osanpo/